日産GT-R、最後尾から奇跡の大逆転。優勝できた3つの要因とは (3ページ目)

  • 吉田知弘●取材・文 text by Yoshita Tomohiro
  • 吉田成信●撮影 photo by Yoshida Shigenobu

「(作業が)もう1、2秒遅れていたら、12号車に先行されていました。12号車とは実力が拮抗しているので、先行されるとコース上で追い抜くのは困難だったと思います」

 ふたつ目の要因は、まさにこの「迅速なピット作業」にほかならない。

 23号車は以前からピット作業の精度向上に力を注いでおり、チームのファクトリーにタイヤ交換や給油作業の練習ができる専用設備を整えていた。またレース前の金曜日には松田とクインタレッリも参加して、実車を使った本番さながらのピットストップ練習を何度も繰り返したという。

 この地道な努力が、この鈴鹿サーキットで活きた。作業時間があと2秒ほど長かったら、おそらく4、5番手でのコース復帰となっていたと鈴木監督は語る。

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 そして3つ目の要因は、予選クラッシュからの「見事な立ち直り」だろう。

 チャンピオンシップを争っている23号車は、この鈴鹿ラウンドに勝負をかけていた。それだけに、Q1のクラッシュはあまりにも代償が大きく、ピットは重苦しい雰囲気に包まれた。

 クラッシュしたダンロップコーナーの出口は、時速200kmに達するアクセル全開区間。縁石やグラベルゾーンでマシンがジャンプしてほぼ減速しないままクラッシュしたこともあり、マシンのダメージも決して軽くはなかった。

 予選で大きなクラッシュをしてしまった車両は、メカニックが徹夜も辞さない覚悟で修復作業にあたる。そしてマシンが直ってレースに出られたとしても、徹夜で疲労の溜まったメカニックのピット作業等の精度が落ちることも少なくない。

「エンジンより前の部分はすべて交換しました。かなりのダメージを負っていました。しかし、徹夜をすることもなく、日付が変わる前に作業を終えてホテルに戻ることができました」(鈴木監督)

 これが前述の迅速なピット作業につながったのだろう。さらに鈴木監督は、こう続ける。

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