日産GT-R、最後尾から奇跡の大逆転。
優勝できた3つの要因とは

  • 吉田知弘●取材・文 text by Yoshita Tomohiro
  • 吉田成信●撮影 photo by Yoshida Shigenobu

 レース後半は12号車との「日産GT-R対決」となったが、23号車の松田が最後までトップを死守。23号車は今季2勝目を飾り、松田とクインタレッリはパルクフェルメで喜び合った。

 なぜ今回、この"奇跡の大逆転"が起きたのか。最後尾スタートの23号車が勝てたのは、3つの要因が考えられる。

 ひとつ目は、万が一の事態にも対応できた「ピットでの準備」が挙げられる。

 公式映像だと、52号車がクラッシュしたタイミングで、たまたま23号車はピット作業を行なっていたように見えた。しかし、23号車を率いる鈴木豊監督はこう語る。

「当初はタイヤのコンディションもよかったので、もうしばらくは(ピットに入らずに)行こうかなと思っていました。ただ、突然SCが入る可能性もあるので、いつでもピット作業ができる準備はしておきました。そうしたら、モニターに(52号車のアクシデントが)映ったので、すぐにピットに入れました」

 ただ、SC導入中はドライバー交代を伴うピット作業が許されない。そのため、ピットインについては一瞬の判断が結果に大きく影響する。

 52号車のクラッシュが映し出された時、トップながらまだドライバー交代を行なっていない23号車は、コース後半のスプーンコーナーを立ち上がってバックストレートに入ったところ。ここからピット入り口までは、わずか20秒弱しかない。そのSCが導入される前にピットインするべきか、入らないでこのまま行くか......。このわずかな時間で、チームは的確な判断を下さなければいけなかったのだ。

「(52号車のクラッシュが)モニターに映ってから2、3秒の間に『ピットに入って!』と無線を入れました」(鈴木監督)

 しかしながら、絶妙なタイミングでピットに入った23号車も、決して余裕がある状態ではなかった。このチャンスで大幅に順位を上げられる可能性があるとはいえ、トップでコースに復帰するには絶対にミスは許されない。鈴木監督はその状況をこう振り返った。

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