トヨタが意地の逆転劇。「スープラ」の名を汚すわけにはいかない (3ページ目)

  • 吉田知弘●取材・文 text by Yoshita Tomohiro
  • 吉田成信●撮影 photo by Yoshida Shigenobu

 脇阪監督は新型のGRスープラが誕生したエピソードも語ってくれた。

 このクルマが誕生したきっかけ......。それは、トヨタの豊田章男社長と同社所属のメカニック・ドライバーとして車両開発に携わった故・成瀬弘氏が「もっといいクルマづくり」のための一環として、ドイツのニュルブルクリンクで行なわれた運転訓練プログラムでの経験がすべての始まりだったという。

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「TOYOTA GAZOO RACING(TGR)はクルマを売るためにレースをしていて、その中でも『もっといいクルマづくり』をレースのフィールドで行なうのがTGRの役割です。その原点は、ニュルブルクリンクでの豊田章男社長と成瀬弘さんの運転訓練でした。

 実はそのテーマに似合うクルマが、当時のトヨタには発売中止になったスープラしかなかったんです。一方、他の自動車メーカーはこれから売るクルマで、どんどんテストをしてレースに出ていました。豊田社長と成瀬さんはものすごく悔しい思いをしたようで、その経験があったからこそTGRの活動がスタートし、それがトヨタのクルマづくりの根幹の想いとなり、今のトヨタ自動車があります。

 ふたりがニュルブルクリンクで悔しい想いをした先代の80スープラがあったからこそ、GRスープラをこんな状況下でも復活させたと思います、これからTGRが進んでいく方向に対して、GRスープラはものすごく大切なクルマであることは間違いない。だから我々はGRスープラでデビューウィンとデビューイヤーチャンピオンを達成して、豊田社長とともに天国の成瀬さんに報告できたらなと思います」

 この想いは脇阪監督のみならず、トヨタのGT500クラスに関わるドライバーやスタッフ全員が共有している。

 そのためにも、ここでライバルに負けるにはいかない......。今回優勝を飾った39号車はもちろん、後方から追い上げてきた14号車や37号車の力強さからも、トヨタ陣営の"意地"を感じる1戦だった。

 これでドライバーズランキングでは、大嶋/坪井組の14号車がトップに浮上。平川/キャシディ組の37号車が2位となり、再びトヨタがリードする展開となった。

 果たしてGRスープラは、デビューイヤーチャンピオンの座を射止めることができるのか。残り3戦、ますます目が離せない。

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