新世代が台頭するMotoGP。抜け出すヤマハを安定度増したスズキが追う (2ページ目)

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●写真 photo by Takeuchi Hidenobu

 そうした条件下で、ヤマハ勢は金曜午前の走り出しから総じて安定した速さを発揮した。土曜午後の予選でも、フロントローはすべてヤマハが独占。そしてその中でも、最も高い水準で安定していたのが、2番グリッドスタートのクアルタラロだった、ということだ。

 土曜の予選を終えた段階では、多くの選手が「日曜の決勝レースは全24周の終盤10周が厳しい戦いになるだろう」と、口をそろえてコメントをした。これらの言葉の背景については、若干の説明が必要かもしれない。

 MotoGPのレースでは、タイヤサプライヤーのミシュランがハード・ミディアム・ソフトという3種類のコンパウンドのタイヤをフロント用とリア用に供給する。それぞれのチームは、マシン特性やライダーの好み、レース戦略などに応じて、決勝で使用するタイヤを決定する。今回のカタルーニャGPでは、温度条件が低いことと路面のグリップ特性が高くないことなどの要素が絡み合って、タイヤ選択はどのチームも事実上、グリップの良好なソフト一択の状態になっていた。しかし、ソフトコンパウンドはグリップが良好な反面、摩耗しやすい。選手たちが「レース終盤は厳しい戦いになる」と話していたのは、大まかに言えばこのような理由が背景にある。

 つまり、タイヤをどうやって最後までもたせるかが勝負のカギを握る大きな要素になる、というわけだ。  実際に、レースではその要素が勝負の命運を大きく左右した。

 クアルタラロのペースを見てみると、序盤にトップグループにつけて独走態勢を築き上げたときは1分40秒台でコンスタントに走行していた。16周目には41秒台へ下げているが、後続のヤマハ勢がさらに大きくタイムを落としたために、見た目上は2番手に対して2秒以上の差を作り上げることになった。しかし、その内実は、41秒を18周目までなんとか維持したものの、19周目には42秒台へ落とし、ラスト2周の23周目と24周目には43秒台になっていた。

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