ハミルトンの圧倒的強さを中野信治が分析。レース以外の要因に注目 (4ページ目)

  • 川原田剛●文 text by Kawarada Tsuyoshi
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 きっと最初の頃は、ハミルトンもそうだったと思います。だから、勝負に負けたり、負けそうになったりすると精神的にすごく乱れた。しかし、前述したように、そういう時に自分のメンタルをどうコントロールすればいいのかを、おそらくメンタルトレーナーなどの専門家から学んだと思います。

 現在35歳のハミルトンはすでに6度の世界チャンピオンのタイトルを獲得し、年間数十億円を稼いでいます。それでもなお勝ちにいくという貪欲さをキープし続けることは、なかなかできるものではありません。じゃあハミルトンと同じぐらいのハングリーさを持った若いドライバーが今のF1にいるのか? 僕にはいるようには思えません。

 マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)はハングリーだと思いますが、将来を期待されている若いシャルル・ルクレール(フェラーリ)、そしてボッタスからもハミルトンほどのハングリーさを感じません。彼らがチャンピオンになるためには、今のハミルトンの貪欲さを学ばないと絶対に勝てないと思います。

 今シーズン、通算7度目の世界タイトル獲得を目指すハミルトンは、ドライバーとして心身ともにピークにいると思います。30歳半ばという年齢ですが、今まさにシューマッハの偉大な記録に挑んでいますので気力が充実しているだろうし、これまでブランクなくずっとF1マシンに乗り続けていますので、体力的にも大きな問題はないでしょう。ただし、来年以降は徐々に厳しくなっていく可能性はあると思っています。

 僕自身もそうでしたが、やっぱり30代後半に入ってくると、直接的にこれだという原因はないのですが、体力、気力、目や反射神経などが、本人でも気がつかないぐらいちょっとずつ落ちてくる。それが積み重なって、大きく響いてきます。

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