F1後半戦を中野信治が解説。日本人ドライバーのステップアップにも期待 (3ページ目)

  • 川原田剛●文 text by Kawarada Tsuyoshi
  • 桜井淳雄●写真 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 フェラーリのPUは明らかにパワー不足でストレートが遅いので、ダウンフォースをギリギリまで減らしていました。そうすると当然、コーナーが厳しくなり、負担はドライバーにかかっていきます。マシンがコーナーで不安定だと、ドライバーは多少無理してでもアクセルを踏んでいかざるを得ません。その結果、ルクレールは高速コーナーのパラボリカでコースを外れて大クラッシュ。僕は、ドライバーがかわいそうだと思いましたね。

 それでもルクレールはエースの座を任され、すごく高いモチベーションの中で戦っているので、わずかなスキをついて今シーズン2度(開幕戦オーストリアGPと第4戦イギリスGP)も表彰台に上がっています。

 だけどモチベーションが下がっているドライバーが乗ると、パフォーマンスはダダ下がりになってしまう。本来はベッテルとルクレールの差がコンマ1秒しかないはずなのに、1秒近くも開いてしまう。それだけF1はシビアな世界ですし、メンタルが重要なんです。

 もともとベッテルは性格的に逆境に対してはもろいタイプだと思います。すべてがうまく回っている時の速さは、すばらしいものがありました。でも自分の思いどおりにいかなくなった瞬間に崩れ落ちてしまうことがあります。

 そんな彼の性格が今、本来の力を発揮できない状況を招いてしまった一因になっているように見えます。だからといって、ベッテルが遅くなったということでは決してないんです。僕はまだ十分にやれると思っています。

 ベッテルは来年からアストンマーティンとして参戦するレーシングポイントへ移籍することが決まりました。気持ちを新たにして、まだF1で十分に戦えることを証明してほしいし、再びルクレールと同じレベルで戦う姿を見たいです。

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