F1後半戦を中野信治が解説。日本人ドライバーのステップアップにも期待
やっぱり常に進化していかないと、そこそこのドライバーというレベルで終わってしまう可能性があります。彼にはハミルトンのような勝利に対する貪欲さを学んで、ブレークすることを期待しています。
「中団グループの争いは本当におもしろい」と話す中野信治氏(photo by Sportiva) 中団グループで苦しんでいるフェラーリのセバスチャン・ベッテル(33歳)も気になっています。最近、よくベッテルが遅くなったとか、衰えたという人がいますが、僕はそんなふうには全く思っていません。ベッテルが能力を引き出す環境が今のフェラーリにはなくなってしまっただけだと考えています。
ベッテルは今シーズンが始まる前にチーム代表から電話で「契約を延長する意思はないと告げられた」と話しています。その時点で、ベッテルはチームから「あなたにはもう期待していません。シャルル・ルクレールに力を注ぎますよ」と言われたようなものです。
そんなふうに言われて、ドライバーがこれまでどおりのモチベーションを保てるのか? 僕は100%無理だと思います。チームのスタッフにしても、ベッテルに対して力は入らないと思います。たとえ表面的には昨年と同じように仕事をしていたとしても、空気が変わっているはずです。わずかでもそういう流れがチーム内にできてしまうと、もうドライバーは何もできないんです。
ベッテルの胸中には「この野郎。見返してやる」という気持ちがあるかもしれませんが、F1はチームスポーツです。ドライバーがいくら必死に頑張ろうと思っても、周りが動いてくれないと戦えない世界なんですね。
しかも今年のフェラーリは車体が原因なのか、パワーユニット(PU)が原因なのか、僕にはわかりませんが、パッケージとして完全に"外して"しまっているように見えます。今のフェラーリの苦境を象徴していたのが第8戦の地元イタリアGPでした。
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