レッドブル・ホンダの見立てを覆す走り。アルボンはスタッフからの信頼も厚い (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by Boozy

「楽なレースじゃなかったよ。スタートでポジションを落とすと、これからのレースは厳しくなるなと感じるからね。でも、挽回できると疑ったことはなかった。スタートでふたつポジションを失ったところで、僕の闘争心に火が点いたんだ」

 アルボンはそう振り返るが、そこで我を忘れなかった。むしろ冷静に、自分たちの強みを生かしてポジションを取り戻す方法を考え、レース全体を組み立てたのだ。

「自分たちに速さがあることはわかっていたから、あとはレース中に忍耐力をいかに切らさないようにして、オーバーテイクを焦って仕掛けないこと。そして、あとでオーバーテイクができるようにタイヤを残しておくことを心がけて走ったよ」

 レースが残り13周で2度目の赤旗中断となって2度目のリスタートとなった時、前に立ちはだかったのはルノーのダニエル・リカルドだった。

 彼らもチーム初表彰台がかかっていた。ルノーは空気抵抗が少ないぶん、最高速が伸びるクルマだ。オーバーテイクポイントが乏しいムジェロでは、追い抜きができるかどうかわからなかった。

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 その一方でホンダは、フェルスタッペン車に起きたパワーユニットのトラブルがイタリアGPと同様に赤旗中断とスタート前後のオーバーヒートによって起きた可能性を抱えていた。そのため、アルボンの再スタートも不安を抱えながら見守るしかなかった。

 ホンダの田辺豊治テクニカルディレクターはこう語る。

「詳しいことはまだ調査中なのでわかりません。(イタリアGPと)似たようなところもあるんですが、原因はまったく違うものではないかと思っています。ただ、原因がはっきりと究明できていないので、スタンディングスタートの2回目は『もういい加減にしてよ!』って感じでした」

 チームからはアルボンにパワーユニットの温度を上げないよう、フォーメーションラップの間はフルスロットルを極力避けるように指示を飛ばした。一方、アルボンは2度のスタンディングスタートでの経験から「リアタイヤのグリップが重要だ」と感じ、タイヤのウォームアップを懸念していた。

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