ホンダF1今季2勝目。ガスリーが表彰台の中央で亡き友に捧げる (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by Boozy

 今年のユベールの命日に、ガスリーはそうつぶやいた。

 降格が発表されて、いの一番にメッセージを送ってきてくれたのはユベールだった。「実力を証明して見返してやればいいじゃないか」。あの時、感情にまかせて荒っぽいレースを繰り返していたら、ブラジルGPの初表彰台も、この初優勝もなかったかもしれない。

 今年のガスリーは見違えるような走りを見せた。とくに予選では僚友ダニール・クビアトを圧倒する走りを見せ、マシンに少々難があってもQ3まで運ぶほど常に乗れていた。

 ユベールが亡くなってから1年後のベルギーGPでも、ハードタイヤスタートの戦略が台なしになるタイミングでのセーフティカー導入に見舞われながら、最後まであきらめなかった。最後尾から執念の追い上げを見せて8位まで挽回し、ドライバー・オブ・ザ・デイに選ばれた。

 そしてモンツァにやって来ても、初日から4位と絶好調だった。

 決勝では19周目、ケビン・マグヌッセン(ハース)がコース脇にマシンを止めたのとほぼ時を同じくしてピットに飛び込み、セーフティカーが導入されて隊列が整ってから他車がタイヤ交換を終えると、3位まで浮上するという幸運に恵まれた。さらにはシャルル・ルクレール(フェラーリ)のクラッシュによって赤旗中断となり、その間にタイヤ交換を許されて他車と同じ新品のミディアムを履くことさえできた。

 しかし、ここから先はガチンコの勝負だ。

 首位ルイス・ハミルトン(メルセデスAMG)は10秒ストップ&ゴーペナルティのため後退。だが、純粋な速さでは優位にあるはずのランス・ストロール(レーシングポイント)をオーバーテイクし、さらにはマクラーレン勢がキミ・ライコネン(アルファロメオ・レーシング)を抜く間にギャップを広げて3.9秒に。その後も毎ラップ0.3秒程度の差しか縮めさせなかった。

 ガスリーは焦りもせず、オーバードライブもせず、極めて冷静に、しかし果敢に攻めた。そして、ミスも犯さなかった。

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