佐藤琢磨「すべて戦略通り」のすごさ。インディ500で2度目の優勝 (2ページ目)

  • 天野雅彦●文 text by Masahiko Jack Amano
  • photo by USA TODAY Sports/Reuters/AFLO

 予選1日目に9番手だった琢磨が一気に6人抜きの3番手。ここに今年の琢磨とレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングの強さが表れていた。徐々にだが、確実にマシンのスピードアップを実現していったのだ。

 レースではアンドレッティのスピードが上がらず、予選で2番手だったスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)が序盤からリードを続けた。ディクソンを追ったのは予選9位だったアレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)。琢磨はトップ5~10で淡々と周回していた。スピードが足りずに苦戦しているのではなく、終盤の戦いに向けた情報収集に努めていたのだ。10年に渡る経験から、彼は最後から2回目のピットストップ以降、ゴールまでの約60周が勝負と考えているのだ。

 4回のピットストップでマシンを微調整し、琢磨はほぼ思い通りのマシンを手に入れた。最後のピットストップを前にディクソンをパスしてトップに立ち、先頭を走る感覚を確認し、後方に回ったライバル勢の実力も把握した。

 しばらく先頭を走ったことで燃料を少し多めに消費、琢磨はディクソンより1周早く最後のピットに入った。ディクソンが作業を終えてコースに戻ると、順位は逆転し、琢磨は2番手に下がった。しかし、すぐさま行動を起こし、ディクソンをパス。逃げの態勢に入った。

 リードを奪い返そうとディクソンはトライした。しかし、琢磨を射程距離圏内にたぐり寄せることがなかなかできない。ここでは同じホンダエンジンを使う者同士、燃費セーブ競争も同時進行していた。

 琢磨はディクソンより1周先にピットしたため、燃費では厳しい立場に立たされる可能性があった。しかし、燃費セーブが得意な彼はゴールまで戦うに十分な燃料を確保。逆にディクソンは燃費を抑えながらスピードを保つことに苦労をすることとなった。

 すると残り5周、ターン4で大アクシデントが発生し、イエローフラッグが出された。赤旗中断も考えられたが、残り周回数が少ないこと、コースの修復に長い時間が必要なことから、フルコースコーションのままゴールが迎えられることになった。琢磨の勝利が決まったのだ。

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