MotoGP「無敵の王者」マルケスの少年時代。デビュー前にいきなり骨折 (2ページ目)

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 次のレースは8月9日のチェコGPだ。捲土重来(けんどちょうらい)を期すマルケスは、可能な限り体調を戻して復帰するため、厳しいトレーニングを続けた。しかし、挿入したチタンプレートに力が加えられたことによるゆがみが見つかったため、プレート交換の再手術を余儀なくされた。結局、8月9日から23日まで続く3週連続のレースを欠場することになり、開幕から第5戦までのポイント獲得はゼロとなった。これで、マルケスは今季のチャンピオン争いからは事実上、脱落することになった。

 開幕前には誰も予想できなかった、あっけない王座からの陥落だ。

 マルケスは最高峰クラスへ昇格した13年に、数々の最年少記録を塗り替えながら世界王座に就いた。その後も15年を除けば毎年チャンピオンを獲得し、文字どおり「無敵」の王者として現代のMotoGPに君臨してきた。その折々には何度か大きな負傷もあったが、超人的な努力と精神力ですべて克服してきた。

 とはいえ負傷は、ある意味でライダーにはつきものとも言える。つまり、二輪ロードレースはそれだけ危険と背中合わせのスポーツである、ということだ。そして、その競技で世界の頂点を競うMotoGPライダーたちは、紙一重の領域を常に見極めながら栄光を目指して戦っているのだろう。

 マルケスの場合は、最小排気量の125ccクラス(当時)で世界選手権に参戦を開始した最初のシーズンから、すでにケガと無縁ではなかった。ある意味では、彼はケガと二人三脚で世界選手権の世界を戦い、幾多の困難を乗り越えながら成長してきた、といってもいいかもしれない。

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