今季初勝利。レッドブル・ホンダとフェルスタッペンが覆したF1の常識 (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by Boozy

 しかし、フェルスタッペンはこれに従わなかった。

「これがメルセデスAMGに追い付く唯一のチャンスなんだ。おばあちゃんみたいな運転で待っているつもりはないよ!」

 もちろん、無謀に攻めて行ったわけではない。フェルスタッペンはその後に「僕だって分別はついている。心配しなくても大丈夫だよ」と付け加えた。

 前走車の2秒以内に入ると気流が大きく乱れ、ダウンフォースを失ってマシンはスライドし、タイヤを傷める。F1界では誰もが知っている「常識」だが、それはあくまでデータ上の話でしかない。フェルスタッペンは自分の感覚で、この走りならタイヤを痛めることはないと確信を持ってドライビングしたのだ。

「僕らはこれまでメルセデスAMGと戦えるチャンスなんてなかったのに、今日はそれができそうだった。だから、彼らにプレッシャーをかけていった。むやみやたらに攻めると、時には自分のタイヤを傷めてしまって自滅行為になりかねないけど、今日はそうならないと思っていたんだ」

 データを超えるドライビングセンス。それがフェルスタッペンのすごさだ。ホーナー代表も、その点には全幅の信頼を寄せている。

「マックスはタイヤを感じ取る能力が非常に高い。彼は高速コーナーでタイヤをプロテクトして走ることに自信を持っていたし、最適なタイミングでピットインするためのドライビングができていた。本当に信じられないくらい、すばらしいタイヤマネジメントをしていたよ」

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 13周目と14周目にメルセデスAMG勢がピットインを余儀なくされたことで、フェルスタッペンは26周目まで引っ張った。その間も、よりフレッシュなハードタイヤに履き替えたメルセデスAMG勢とほぼ同等のペースで走り続けた。

 だが、ピット作業でわずかなミスがあり、前をキープできるはずだったバルタリ・ボッタスに先行を許してしまう。それでも新品ミディアムの一撃を生かし、ピットアウト直後のウェリントンストレートで捕まえ、ターン6への飛び込みで仕留めた。

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