今季初勝利。レッドブル・ホンダと
フェルスタッペンが覆したF1の常識

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by Boozy

 そんななかでフェルスタッペンだけがハードタイヤを履き、さらには予選でのアタック数をわずか4回に抑えたことで、ミディアムもハードも新品を決勝に残した。タイヤに厳しい決勝を見据え、レース週末全体のタイヤ戦略を組み立てていたのだ。

 もちろん、それはリスクと背中合わせの戦略。だが、その「攻める姿勢」こそが勝利への重要な足がかりだった。

 ホンダの山本雅史マネージングディレクターは、金曜から勝利の可能性を感じていたという。昨年のオーストリアGPで初勝利を挙げた時と同じ感覚だった。

「金曜日の走行が終わった時点で、広報スタッフに『今週は勝つかもしれないよ』って言っていたんです。先週のレースでメルセデスAMGにタイヤトラブルがあったので、今週はいろんなことが噛み合えば何かが起きるんじゃないかという手応えはありました。

 ですから、予選前のブリーフィングでQ2はハードタイヤでいくと聞いた時には『やった!』と小さなガッツポーズでしたね。レースっていうのは攻めていかなければいけないんだ、ということをあらためて痛感したレースでした。それをきちんとやり切るチームとドライバーの力が光っていたと思います」

 ハードタイヤでスタートしたフェルスタッペンは、ミディアムを履く後続勢を抑えるどころか、絶好の発進加速でニコ・ヒュルケンベルグ(レーシングポイント)を抜いて3位に上がった。

「何か起きた時にチャンスを掴むには、メルセデスAMG勢のすぐ後ろの3位にいなければならない。レーシングポイント勢とは決勝ペースが違うから、問題はいつニコを抜くかで、抜いてしまえばあとはひとり旅になる」

 フェルスタッペンはスタート前にそう語っていた。しかし、その予想はいいほうに外れた。

 メルセデスAMG勢のタイヤにはブリスターが発生し、10周目を迎えるころには大幅にペースが落ちてきた。フェルスタッペンとの差は見る間に縮まり、レースエンジニアのジャンピエロ・ランビアーズが「今はタイヤを守るためにペースを落として、ギャップを2秒以上に広げろ」と言ったほどだった。

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