不屈のホルヘ・ロレンソ、ロッシと一触即発。MotoGPでも大暴れ (5ページ目)

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 09年のカタルーニャGPは、ふたりのそんな張り詰めた緊張関係を象徴するレースになった。

 勝負は、ロレンソとロッシの2台があっさりと後続を引き離し、トップを入れ替えながらバトルを続ける一騎打ちになった。最後の2周は、ロレンソがロッシの前を奪うと即座にロッシも反応するという固唾を呑む展開だった。そして、最終ラップの最終コーナーで、前にいたロレンソが最後も抑え切るかと見えた、その一瞬。ロッシがイン側へ飛び込んでコーナーを先に立ち上がり、0.095秒差先にチェッカーフラッグを受けた。

 シーズンの推移も、まさにこのレース同様に緊迫した展開になった。最後はロッシがロレンソを凌ぎ切って、通算9回目の世界タイトルを獲得した。

 だが、10年はロレンソのシーズンになった。年間18戦中9勝。表彰台を逃したのは2レースのみ。しかも、その2レースとも4位でゴールという高い安定度で、チャンピオンの座に就いた。タイトルを決めたのは最終戦4戦手前の第15戦マレーシアGP。圧倒的に優勢なシーズンだった。

 王座に就いたマレーシアGPの決勝日夕刻、ロレンソはチャンピオン獲得の記者会見を終えると、チームマネージャーのウィルコ・ズィーレンベルグを壇上に呼んだ。2人はいきなり壇上で、クイーンの『We Are The Champions』を歌い始めた。やや調子っぱずれな声がなんとも微笑ましく、彼らの人柄の一面がうかがえるような気がする、そんなひとときだった。

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