日本での挫折をきっかけに変身。ホルヘ・ロレンソは王座へ歩き出した

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 250ccクラスで大きな成長を見せたロレンソは、タイトルを獲得した06年ごろからMotoGPへのステップアップが取り沙汰されるようになった。なかでも、「どうやらヤマハが彼に興味を示しているらしい」という噂は、いつしか公知の事実のように語られ始めた。

 ロレンソが250ccクラスの連覇に向けて、順調に勝利を重ねていた07年のことだ。

 7月下旬のアメリカ・カリフォルニア州ラグナセカサーキットに、ロレンソの姿があった。そこで行なわれるU.S.GPは、MotoGPクラスのみの開催。中小排気量クラスはすでにひと足早くサマーブレイク期間に入っていた。当時250ccライダーだったロレンソは、本来なら「そこにいるはずのない」人物である。ラグナセカのプレスルームで話に応じた彼は「MotoGPのレース見物に来ただけだよ」と話した。

 もちろんそれが表面上の理由に過ぎないことは、ある程度の事情を知る者の目には明らかだった。後年にロレンソ自身が明かしたところでは、やはり、翌08年からのヤマハMotoGPファクトリーチーム昇格に際して契約の詰めを行なうために、ラグナセカサーキットを訪問していたのだという。(つづく)

【profile】 ホルヘ・ロレンソ Jorge Lorenzo
1987年5月4日、スペイン・マジョルカ島パルマ・デ・マジョルカ生まれ。幼少期からミニクロスのレースに参加。2002年に競技規則の出場最年少15歳の誕生日を迎えると同時に、125ccクラスに出場し、グランプリデビューを果たす。05年に250ccクラスにステップアップし、06年、07年の2年連続で年間王者に輝いた。08年、最高峰MotoGPに参戦。10年、12年、15年にタイトルを獲得した。19年に引退。

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