フェルスタッペンの心に火を点けた、メカニックの努力とホンダの心意気 (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by Boozy


「みんな、信じられないほどすばらしい仕事をしてくれて、本当にありがとう」

 このメカニックたちの驚異的な仕事ぶりが、フェルスタッペンに火を点けたことは間違いなかった。

 ハンガロリンクでのRB16は、昨年ポールポジションを獲った場所とは思えないほど挙動が定まらず、金曜から苦戦し続けていた。

 予選ではQ3に新品タイヤが1セットしか残せないほど追い詰められ、去年の自分たちのタイムすら上回ることができず、フェルタッペンは7位に終わった。アレクサンダー・アルボンに至っては13位でQ2敗退という有様だった。

 コーナーの入口では、ステアリングを切ってもクルマが曲がっていかず、コーナーのエイペックスを過ぎたあたりから急にリアが乱れ、激しくステアリング修正をしながら立ち上がって行かなければならない。その結果、コーナーの出口でもトラクションがなく、加速が遅れることになる。

「コーナー中のマシンバランスがよくないんだ。アンダーステア、オーバーステア、グリップがなくてスナップする。トップスピードもあまりないし。すべてが合わさって、マシンパッケージとしてとにかく遅い。限界ギリギリで走ると挙動がトリッキーになって、リアを失ったり、アンダーステアが出たりするんだ」

 レッドブル・リンクでの2戦でもいくつかのコーナーで出ていたこの症状が、曲がりくねったハンガロリンクではほとんどのコーナーで出ていた。その結果、メルセデスAMGが昨年のタイムを1秒以上縮めたのに対し、レッドブルは昨年よりも遅いという信じられない事態になってしまった。

 今季3戦目にして、この問題の原因はセットアップではなく、空力パッケージそのものにあることがわかってきた。

 マシンの限界点で走る予選では極端にナーバスな挙動になるが、燃料が重い状態でタイヤを労って走るためにマシンの限界点を使うことが少ない決勝では安定した走りができる。実際、予選で大差をつけられたレーシングポイントに対し、決勝では50秒近い大差をつけた。

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