2020.07.16

震災直後の日本にエール。MotoGP王者のストーナーは誠実であり続けた

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 日本語を解さない世界中のファンやレース関係者は、ストーナーが頭上に掲げた旗の文字を判読できなかったかもしれない。しかし、その意味は即座に伝わったはずだ。人々は壇上に立つストーナー、そして彼が掲げる旗に大きな拍手を送った。

 実は、この日の丸の旗は、震災前からカタールで開幕へ向けたテスト走行を行なっていたHRC(ホンダ・レーシング・コーポレーション)のスタッフが、現地の日本大使館から借り出してきたものだった。つまり、旗に記された言葉は、彼らから故国へ向けたメッセージでもあった。

 カタールGPを終え、次戦からは舞台を欧州大陸に移す。第2戦スペインGPは、イベリア半島南部のヘレス・サーキットで開催された。土曜の予選でストーナーはポールポジションを獲得。翌日の決勝レースも優勝候補の筆頭と目されていた。

 その決勝レースで事件は起こった。

 ストーナーが順調にトップを走行していた8周目に、後方から追い上げてきたバレンティーノ・ロッシが、1コーナーでイン側を突いて前に出ようとしたものの、フロントを切れ込ませた。そして、ストーナーを巻き添えにする格好で転倒。ロッシはマシンを引き起こして即座にレースへ復帰したが、ストーナーはその場でリタイアとなってしまった。