超一流の走りを簡単に実行するストーナー。病と闘い、憧れのチームへ (3ページ目)

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 当時の彼に対する「電子制御任せで走っている」「図抜けたマシンパワーのおかげ」などといった事実と異なる揶揄(やゆ)や、「走りにおもしろみがない」などという難癖に近い批判の声が出たのは、この危なげない(ように見える)ライディングにその理由の一端があったのかもしれない。

 その実、彼の絶妙なスライドコントロールや繊細なスロットル操作は外から見てもわかりにくい。タイヤエンジニアやライバル選手たちがデータをみると目をむくような操作を行なっていたことは、後年になってよく指摘されるようになった。これは、ちまたでよく言われる「ファインプレーをファインプレーのように見せないのが、名選手の名選手たるゆえん」という俚諺(りげん)とも通じるところがあるかもしれない。

見た目にはわかりにくい繊細な操作技術をもつストーナー見た目にはわかりにくい繊細な操作技術をもつストーナー そんなストーナーの特性が象徴的に表れたのは、第13戦サンマリノGPだ。

 アドリア海に面したイタリア有数の観光地リミニ近郊にあるミザノ・サーキットで開催され、この年からレースカレンダーに復活したGPだった。バレンティーノ・ロッシの住むタヴッリアからも近く、ロッシが少年時代に初めてレーシングマシンを走らせたのはこのサーキットだったという。

 それだけにこの会場は他のどのサーキットよりもロッシファンの占める割合が高い。ロッシ自身も、カレンダー復帰初年だけに必勝態勢でミザノの週末に臨んだ。

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