超一流の走りを簡単に実行するストーナー。病と闘い、憧れのチームへ (2ページ目)

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 しかし、実際にホンダサテライトチームからドゥカティファクトリーへ移籍した最初のレースで、ストーナーはあっさりと優勝を飾った。しかも、2位のバレンティーノ・ロッシとのタイム差は2.838秒という大差である。このリザルトが意味しているのは、前年の言葉が苦し紛れの言い訳などではなく、単に事実を指摘していたに過ぎないということだ。彼はそれを自らの力で証明してみせた。

 以後のレースでも、ストーナーは圧倒的な速さを発揮し続けた。

・第3戦トルコGP−6.207秒
・第4戦中国GP−3.036秒
・第8戦イギリスGP−11.768秒
・第11戦U.S.GP−9.865秒
・第12戦チェコGP−7.903秒

 上記はいずれも、07年に彼が優勝したレースでの2位とのタイム差だ。この数字を見れば、いかに容赦ない勝ちっぷりだったかがよくわかる。レース序盤で前に出ると、あとは淡々と後続を引き離し続ける一方的な展開がほとんどで、派手なバトルになることは滅多になかった。

 例えば、ブレーキングでコーナー奥まで深く突っ込んでライバルの機先を制したり、派手に暴れるマシンをねじ伏せるように操って抑えこんだりすれば、見た目にもわかりやすくライダーの天才性をアピールできるだろう。だが、ストーナーの場合、あまりにもスムーズで危なげなく走っている(ように見える)。

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