2020.07.02

F1を撮影して30年。2人のベテランカメラマンがぶっちゃける今季展望

  • 川原田剛●取材・構成 text by Kawarada Tsuyoshi
  • 村上庄吾●撮影 photo by Murakami Shogo

桜井 圧倒的なチーム力と開発力を誇るメルセデスには有利に働いたかもしれません。しかも熱田さんの言うように、ハミルトンは力が落ちているような兆候はまったくありませんからね。成熟しきっています。彼のすごいところはチームの指示どおりの走りを100%できること。「このタイムで走ってこい」と言われれば、しっかりと走る。そういうことをできる人は他にいませんよね。ハミルトンはF1直下のGP2(現在のFIA-F2)の時代から速かったのでチャンピオンになるべくしてなったと思います。ただ、被写体としてはあまり魅力を感じませんが......。

●なぜ被写体としてのハミルトンに魅力を感じないのですか?

桜井 優勝して表彰台でシャンペンシャワーをする時も、ファンやカメラマンに見せるんじゃなくて、すぐカメラのない反対側に行ってしまいます。みんなを楽しませるエンターテイナーではないですね。自分で勝手に喜んでいるだけ、というふうに感じてしまう(笑)。

 シューマッハは勝てば表彰台でいろんなポーズを決めてくれたし、盛大にシャンパン・ファイトをやってくれました。ドライバーは単に速く走るだけでなく、勝って、その喜びを観客やメディアと共有し、F1の魅力を伝えていくことも仕事だと思います。それをシューマッハ自身がよくわかっていました。だから僕らも絵になる写真をたくさん撮ることができた。シューマッハは強くて、速くて、魅せる、「真のエンターテイナー」でしたね。

熱田 確かに。ハミルトンは強いし、速いのは誰もが認めています。ハミルトンの通算勝利数は84勝で、おそらく今年も当初の予定どおりに全22戦が開催されていれば、シューマッハの最多勝記録(91勝)を抜いていたと思います。本当にすばらしいドライバーですが、カメラに撮られることを変に意識しすぎていて、彼の行動は芝居がかっているように見えてしまう。あと気になるのは、ハミルトンとメルセデスのチームとしての一体感があまり感じられないことです。 (後編につづく)

【profile】

熱田 護 あつた・まもる
1963年、三重県鈴鹿市生まれ。2輪の世界GPを転戦した後、91年よりフリーカメラマンとしてF1の撮影を開始。27年間でF1取材500戦を達成し、昨年末に写真集『500GP フォーミュラ1の記憶』(インプレス)を刊行。

桜井淳雄 さくらい・あつお
1968年、三重県津市生まれ。91年の日本GPよりF1の撮影を開始。これまでに400戦以上を取材。F1やフェラーリの公式フォトグラファーも務める。現在、鈴鹿サーキットの公式サイトで特別企画「写真が語るF1の世界」を連載中。

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