父を乗せてウイニングラン。笑顔が忘れられないMotoGPチャンピオン (5ページ目)

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 ヘイデンは、いかにショバートがすごいライダーだったか、子どもの頃の自分がいかに彼の走りに憧れていたかを、笑顔で雄弁に語り続けた。

 06年シーズンが始まり、U.S.GPは前年よりも2週間ほど遅い7月下旬に開催された。そのレースウィーク初日、金曜午前のフリープラクティス後にショバートがヘイデンのピットボックスをサプライズ訪問するという出来事があった。ヘイデンが驚き、子どものように喜んだことは言うまでもない。

 この時のヘイデンはグランプリ参戦4年目、25歳の誕生日を数日後に控えていた。シーズン開幕以来、コンスタントに表彰台を獲り続け、この段階でランキング2番手のバレンティーノ・ロッシに対して26ポイント差を開けていた。3番手でチームメイトのルーキー、ダニ・ペドロサには29ポイント差で、チャンピオン争いの首位に立っていた。

 日曜の決勝レースで、ヘイデンは前年以上の強さを見せた。

 前半で様子を見てから、中盤周回で前に出ると一気に引き離すレース展開で圧勝。ラグナセカ・サーキットで2年連続優勝を果たした。2位にはペドロサが入り、レプソル・ホンダがヘイデンのホームコースでワンツーフィニッシュを達成した。ヘイデンはタイトル争いの地歩をさらに固め、約3週間のサマーブレイク期間に入った。  しかし、夏休み明けのシーズン後半は予想外の波乱が待っていた。 (つづく)

【profile】ニッキー・ヘイデン Nicky Hayden
1981年7月30日、アメリカ・ケンタッキー州生まれ。ニックネームは「ケンタッキーキッド」。2002年AMA(全米選手権)スーパーバイクで史上最年少チャンピオン獲得し、03年からはMotoGPのレプソル・ホンダ・チームに参加。06年シーズンには年間総合優勝を果たす。16年にスーパーバイク世界選手権に転向。17年に交通事故に遭い、帰らぬ人となった。享年35歳。

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