父を乗せてウイニングラン。笑顔が忘れられないMotoGPチャンピオン

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 土曜の予選は当然のようにポールポジションを獲得。日曜の決勝レースは、1周目から後続をぐいぐいと突き放して独走優勝。3年目のシーズンでMotoGP初勝利を達成した。そのウィニングランでヘイデンは、父のアール氏をバイクの後ろに乗せてコースをまわった。

 平均的中流家庭のアール・ヘイデン一家は、決して金銭的に裕福な環境ではなかったようだが、長男トミー、次男ニッキー、三男ロジャー・リーの3人すべてをプロフェッショナルライダーに育て上げた。アール氏はほとんど毎回、次男ニッキーのMotoGPのレースに同行した。レプソル・ホンダ・チームのピットボックスにはいつも、いくつものストップウォッチを固定した自作クリップボードを抱えてラップタイムを計測するアール氏の姿があった。

 その父をホンダRC211Vの後ろに乗せて走る息子のウィニングランを、ラグナセカ・サーキットの観衆は大喝采で祝福した。息子の後ろにまたがるアール氏の誇らしげな笑顔が印象的だった。

 表彰式では、3位と2位の選手に続き、司会者がニッキー・ヘイデンの名を告げると、再び大歓声が沸き起こった。ヘイデンは弾けるような笑顔とともに、表彰台の前で軽やかにツイスト風のステップを踏んで見せた。

 彼の楽しそうな笑顔が作り出す愉快な雰囲気が見ている側に伝染する。ニッキー・ヘイデンはそんなライダーだった。

 そういえば、こんなことがあった。

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