ロッシは5年連続で王座獲得。20代ですでに「生きる伝説」だった (4ページ目)

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 この2000年代後半、ロッシは30歳に近づき、チャンピオンを争う相手は年下の選手ばかりになっていた。

 最高峰クラスに昇格したばかりの頃、ライバルはすべて年上の選手たちだった。宿敵のマックス・ビアッジしかり、04年秋に遺恨が発生し、それまで少なくとも表面上は友好的だったライバル関係を断ち切ったセテ・ジベルナウしかり。しかし、それから数年が経過し、直近の競争相手はみな、自分よりも6〜7歳若い20代前半のストーナーやロレンソ、ダニ・ペドロサといった顔ぶれに変わっていた。

 彼らを相手にシーズンを戦った08年は、3年ぶりに王座の奪取に成功した。そして09年も連覇して、これで都合9度目の世界チャンピオン獲得。このとき、ロッシは30歳。現代のアスリートにとって、30歳という年齢は決して年老いた部類には入らない。だが、ヤマハのマシン開発を指揮してロッシから盤石の信頼を得る古沢は「それでもやはり、若い頃とは違いますよ」と笑いながら話した。「ウチにやってきた当初のバレンティーノは、ヘルメットを脱ぐとすぐにマシンの症状についてコメントを述べていました。でも今は、ヘルメットを脱いで少し呼吸を整えてから、話しはじめますからね」

 それでも、まだ30歳にすぎない。ロッシはきっと、これから先も数回はチャンピオンを獲得するに違いない。多くの人がそう考えた。

 ヤマハ内部では、ロレンソとの緊張関係は年々高まり、2010年はそのロレンソが最高峰クラス3年目にして初タイトルを獲得。ロッシは、バージェス以下のチームスタッフを従えて、11年にドゥカティへ移籍した。イタリアメーカーのマシンにイタリア人選手が乗るという、完全イタリアンパッケージ。しかもそのライダーがロッシとくれば、期待は否が応でも高まる。ホンダからヤマハへ移籍したときのような、劇的なドラマの再現を多くの人が期待した

 
しかし、事態は04年のようなわけにはいかなかった。
(つづく)

【profile】
バレンティーノ・ロッシ Valentino Rossi
1979年2月16日生まれ、イタリア・ウルビーノ出身。MotoGPにおける現役最年長ライダーで、現在ヤマハ所属。グランプリライダーの父グラジアーノの影響で、幼少期からレース経験を積む。96年に125ccクラスデビューを果たし、翌年、世界タイトルを初獲得。250ccクラス王座を経て、当時最高峰クラスの2ストローク500ccを2001年に制覇。02年から始まったMotoGPでは4年連続を含む計7回タイトル獲得。

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