2020.05.06

セナを激怒させ、六本木で飲み歩く。エディ・アーバインと日本の深い関係

  • 川原田剛●文 text by Kawarada Tsuyoshi
  • photo by Ferrari

 そして懐具合が寂しくなると、目黒のホビーショップにひとりでフラっと現れ、レーシングウェアやチームのグッズなどを売っていたという。値段交渉を自ら行ない、受け取った札束を手に、また六本木へと繰り出す。そんな生活を満喫していたようだ。

「全日本F3000やジョーダンの時代はいろんなものを売りにきました。フェラーリのドライバーになると、さすがにレーシングスーツやヘルメットなどの"大物"は持ち込みませんでしたが、日本GPの前後には必ず顔を出していましたね。あのお金は六本木での飲み代になっていたと思います」と元ホビーショップの店員は笑いながら語っていた。

 日本での活躍もあり、アーバインは93年の第15戦日本GPでジョーダンからデビューするチャンスをつかむ。鈴鹿でのF1デビューは世界に衝撃を与えた。

 この年のジョーダンは日本GPまでノーポイントだったが、スポット参戦したアーバインは予選で8位を獲得、決勝でもデーモン・ヒルや若きシューマッハと堂々とバトルを演じ、6位でフィニッシュ。初出場で初入賞という快挙を達成するのだった。

 さらにレース後、もうひとつの衝撃がサーキットを駆け巡る。日本GPを制したアイルトン・セナがジョーダンのピットに足を運び、アーバインに対して「なぜ周回遅れになる時に素直に進路を譲らないんだ......」と説教をすると、なんと彼は「俺は自分のレースをしていただけさ。あんたが遅かったから」と言い返したのだ。新人に反論されたセナは激高し、思わずアーバインを殴打するという一幕があった。