F1開幕戦の中止はなぜ
ギリギリの決断になったのか?

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 表面的な事象だけを見れば、たったひとりの感染者のためにオーストラリアGPが中止になったということになり、それに対して批判的な声もある。

 しかし、実際にはパドックに限らず世界全体での感染拡大を受け、WHO(世界保健機構)からのパンデミック宣言や地元政府からのイベント自粛要請が出されたことで開催は困難になり、チーム側が開催に反対したことで実質的に中止という結論に至った。

 ひとりのためではなく、アルバートパークに集まったすべての関係者とファンを守るため、さらにはメルボルン全体、オーストラリア全体への感染拡大を防ぐために中止になったのだ。

「昨夜も遅くまでFOMと話し合いを行ない、関係者との調整を重ねてきた。今朝になって地元政府の保健当局責任者が大きく見解を変えたことが、我々の決断に大きく影響した。これ以上早く発表することはできなかった」

 主催者側はこう弁明したが、チーム関係者から感染者が出ようと出まいと、こうした結論に至ったのであれば、当初から多くの関係者やファンをアルバートパークまで来させて彼らの身を危険にさらす必要などなかったはずだ。

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