長島哲太、Moto2初優勝。最終ラップ、亡き友・富沢祥也を想った (6ページ目)

  • 西村章●取材・文・撮影 text & photo by Nishimura Akira

 レースが始まると、どんどん前へ出ていくことができた。限界まで攻めても、どこでブレーキングすればいいのか、どこまでバイクを倒し込めるのか、どんなふうにスロットルを開ければどこまでタイムを詰めていけるのか、限界点が手に取るようにわかり、どんなリスクもすべて自分のコントロール下に収めることができた。

 最終ラップに後続選手を引き離してゴールへ向かってひた走っている時に、ふと、亡き友人、富沢祥也のことを考えた。

 10年前の開幕戦は、世界選手権の中排気量クラスが2ストローク250ccから、4ストローク600ccエンジンのMoto2クラスへと変更された最初の大会だった。その決勝で、富沢は圧倒的なスピードを披露して独走し、初優勝を果たした。

 長島は少年時代から、ふたつ年上の友人、富沢を追いかけるようにレースを続けてきた。富沢はその年の秋に夭逝し、もはやどれほど追いかけようとしても、その背中に追いつくことはできない。だが、あれから10年を経て、今、自分はその時の祥也と同じコースを走っている。

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