長島哲太、Moto2初優勝。
最終ラップ、亡き友・富沢祥也を想った

  • 西村章●取材・文・撮影 text & photo by Nishimura Akira

 いつも笑顔を絶やさない好青年で、誰からも愛される好人物だが、けっして突き抜けた天才的資質の持ち主と見なされていたわけではない。

 彼の人柄を愛し、才能を信じる人々はたゆまぬ支持と応援を続けてきたが、2019年終了段階でまだ表彰台経験はなく、ベストリザルトは5位が2回。2020年にMoto2クラスの名門「Red Bull KTM Ajo」に所属することができたのは、CEV時代に所属していたチームであったこともさることながら、その人柄がチームに愛され、才能の開花を期待されていたからでもあるだろう。

 長島とチームは日曜の決勝に向けて着実にセットアップを積み上げ、レースのリズムも磨き上げてきた。レース前には「転倒するか、表彰台か、イチかバチかだ。この勝負でお前が転んでしまうなら、それは仕方ない」と、全幅の信頼を寄せる言葉がかけられた。

 これで、長島が知らず知らずのうちに自らを押さえ込んでいた精神的なリミッターが解除されることになった。

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