F1で戦う日本人エンジニア・小松礼雄の苦悩。「それも醍醐味」 (4ページ目)

  • 米家峰起●取材・文・撮影 text & photo by Yoneya Mineoki

「予想どおり(データ結果は)あまりよくなかった。空力部門の人は驚いていたけど、僕は驚かなかった。ただ、それをやることによって、どこをどれだけ詰めればいいのか、空力部門の人もわかったのです」

 実戦テストと化した2019年後半戦の走行データのなかで、マシンの問題点はさらに詳しくわかってきた。そのたび、すでに開発が進んでいる2020年型マシンにもそのノウハウは反映され、今年のような問題が来季型で再発しないよう、徹底的に対策が打たれている。

「新しいことがわかるにつれて、来年のクルマもどんどん変えていっています。(後半戦のデータ収集は)そのためにやっているんですから。今年のような間違いが来年はないようにするのが、僕とギュンター(・シュタイナー代表)の責任です。もちろん、自信もあります」

 チームをよくするためには、ファクトリーの開発体制を見直さなければならないことは明らかだった。チーフレースエンジニアの小松は本来、レース現場のマシン運営を統括する技術責任者だが、このファクトリー側の組織強化にも大ナタを振るうことになり、肩書きもディレクターオブエンジニアリング(技術ディレクター)となった。

「今年はチーフレースエンジニアとして、トラックサイドでやることがパフォーマンスの最大の問題じゃないことは明らかだったから、結局は組織を変えなきゃいけないということになり、だからベンブリー(英国側の開発部隊)の組織もけっこう変えたんです。

 風通りをよくして、コミュニケーションがうまく取れるようにして、もっといろんな部署がお互いに一体となって働けるようにしたつもりです。組織というのは本当に"人"なので、組織やプロセスを作れば解決するものではない。それもなきゃいけないですけど、そのプロセスを実行する人が一致団結してやってくれないと。フレームワークやハードウェアだけではダメなんです」

 2019年のシーズン後半戦は、レースの結果がまったく望めないという極めて苦しい環境のなかでの戦いになった。それでも小松エンジニアは2020年に目を向け、チームを強化するために自分たちがやるべき仕事に集中し、必死で戦ってきた。

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