中野信治が語る日本人F1ドライバー育成。絶対に必要な資質とは?

  • 川原田剛●取材・構成 text by Kawarada Tsuyoshi
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 角田は、現時点でF1にもっとも近い日本人ドライバーのひとりである。しかし、世界のトップで活躍できる日本人が誕生させるためには、若く才能ある選手をさらに数多く育てる必要があり、それには長い時間がかかると中野は考えている。

「僕は10年とか、それぐらい長いスパンで考えています。今、12~13歳ぐらいのいいドライバーが何人かいますので、彼らがうまく育っていけば、世界のトップを狙える選手になっていくのではないかと期待しています。

 そのためには、若い頃からきちんと教育していく必要がある。速く走る能力にプラスして、あいさつに始まり、自分の意見を主張し、チームのスタッフとコミュニケーションをとり、チームを引っ張っていく。そういうことを当たり前にできないと、上のクラスでは成功できません。スマートさや人間性が要求されるんです。だから今、SRSでは速さ以外の部分も徹底的に教えこんでいます。

 SRSにはカートのスクール『SRS-Kart』があり、その上にフォーミュラのスクール『SRS-Formula』があります。『SRS-Formula』をクリアした選手が実際にF4やF3などのレースに出場することになりますが、その段階で、ある程度、世界で戦えるレベルの選手になっているようにしたい。

 そういう体制をつくるだけで数年はかかるかもしれませんが、ある意味、そこからが本格的なスタートだと考えています」

 中野は「琢磨がスタンダートになる」と話していた。SRSのプリンシパルであり、現在もアメリカのインディカー選手権で活躍する佐藤琢磨のような速さと人間性を兼ね備えた人材をどんどん育てていけば、「その中から世界のトップカテゴリーでチャンピオン争いをする日本人ドライバーが生まれる」という信念を持ち、生徒ひとりひとりに接しているという。

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