MotoGPマルケス圧勝の裏で、新世代が台頭しベテランは衰退 (5ページ目)

  • ニール・モリソン●取材・文 text by Neil Morrison
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 24歳のビニャーレスが胸のすくような快走を披露できたのは、今季からクルーチーフに就任したエステバン・ガルシアと、ライダーコーチのフリアン・シモンの尽力、そしてさらに落ち着いて冷静なアプローチをできるようになったビニャーレス自身の努力の賜物だ。

 さらにもう何戦かで勝てていたかもしれないが、スタートの失敗やレース序盤の苦戦などにより、そのチャンスを逃してしまった。年間総合3位という結果で終えたが、悲願のタイトル獲得を実現できていない以上、このリザルトはけっして慰めにはならないだろう。

 シーズン後半戦では、ビニャーレスとクアルタラロがどの会場でも速さを披露している。これはYZR-M1が抱えていたタイヤ摩耗の問題をついに克服してきた、ということなのだろう。とはいえ、トップスピードは依然として課題のまま残っている。

 さて、スズキにも目を向けてみよう。

 リンスとGSX-RRの組み合わせは、プレシーズンからライバル勢と互角の強さを見せていた。第3戦・アメリカズGPで初優勝を飾った際には、新たなチャンピオン候補が登場したようにも見えた。だが、そのあとにマルケスと互角に戦い、打ちのめしたのは、第12戦・イギリスGPのみにとどまった。

 オランダGPとドイツGPでは、表彰台圏内を争いながら転倒で終えている。シーズン終盤の7戦はパッとしない成績に終始した。その結果、ランキング4位でこの1年を終えることになってしまった。

 このように、今年は度重なる接近戦と激しいバトル、5名の優勝者と新世代の登場、という多くのトピックがあった。だが、2019年はやはりマルケスのシーズンだった、と言うべきだろう。王者が新たな高みへ自らを押し上げる道を見出した、そんな1年間だったのだ。

西村章●翻訳 translation by Nishimura Akira

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