MotoGP2019シーズンも総合優勝のマルケス。目指す先は「全戦全勝」 (2ページ目)

  • 西村章●撮影 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 だが、マルケスの場合は、上記の言葉に見え隠れしているように、その〈夢のような全戦全勝〉は実現可能だ、と考えている節がある。8回の世界タイトルを獲得した、といっても、年齢はまだ26歳である。今後ますます強さと速さに磨きがかかり、ひょっとしたら本当に全戦全勝を達成してしまうのではないか、と思わせてしまうような底知れなさがその若さのなかに漂っている。

 今季のホンダはライダー・コンストラクター・チームの三冠を達成したが、チームメイトのホルヘ・ロレンソがケガに苦しんで好成績を残せないでいたために、上記3タイトルはすべて独力で達成をした。ホンダは昨年も三冠を達成したが、そのときもチームメイトだったダニ・ペドロサが負傷などによる低迷続きだったため、事実上はマルケスひとりで、コンストラクターやチームタイトルを獲得したようなものだった。

 いかに抜きんでた才能とはいえ、ここまで突出していると、一強多弱状態ができあがって戦いの興趣が削がれてしまう場合が多い。だが、世の中とはうまくできたもので、2019年はマルケスのそんな〈ひとり無敵艦隊〉状態に待ったをかけそうな新たな若い才能が登場したシーズンでもあった。

 今回の第19戦を2位で終えた20歳のファビオ・クアルタラロ(ペトロナス・ヤマハ SRT)は、優勝こそ達成していないものの、最高峰クラス初年度でありながらポールポジション6回と、7戦のレースで表彰台に上り、ルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得した。

 シーズンを戦い終えたランキングは5位で、ファクトリーチームの選手を除くインディペンデント勢ライダーでは最上位。チーム自体も、今年から活動を開始した新興勢力ながら、インディペンデント勢最上位の成績で1年を締めくくった。

「昇格するのが早すぎるとか、MotoGPを走るには経験が足りないとか、いろんなことを言われた」

 クアルタラロ本人がそう振り返るとおり、とくに昇格発表直後の昨秋は、口さがない批判にもさらされてきた。そして、そのような悪口雑言を自らの成績でねじ伏せるために、「開幕前から、一所懸命に準備を進めてきた」と振り返る。

「その結果、何度も表彰台やポールポジションを獲得できたし、それだけの努力も続けてきた。僕を信じていっしょに頑張ってくれたすべての人たちに感謝をしたい。来シーズンが楽しみだよ」

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