ブラジルGP優勝。ホンダパワーがセナの母国で本田宗一郎の誕生日を祝う (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 ホンダの田辺豊治テクニカルディレクターがそう語るように、ハミルトンとはハンガリーで激闘を繰り広げ、メルセデスAMGの戦略の前に敗れた。予選でポールポジションを獲ったように、速さはあったが強さが足りなかった。

 しかし、今回は二度にわたって先手を打ちアンダーカットを仕掛けて来たハミルトンに対し、二度ともにしっかりとポジションを守った。一度目は他車の危険走行に妨害されてハミルトンに先行を許してしまったが、ここが勝負どころと捉えて攻めに転じ、タイヤを酷使してでも全開プッシュですぐさまハミルトンをオーバーテイクして首位を奪い返して見せた。1.82秒というピットストップの新記録も打ち立てた。

 そしてレース終盤にセーフティカーが導入されると、一旦ポジションを失うリスクを冒してでもピットに飛び込んでソフトタイヤに履き替え、リスタート直後に再びハミルトンを抜き去って首位を奪い返した。

 すべての読みが当たり、外的要因に左右されようとも軌道修正を自ら手繰り寄せるドライバーの手腕があった。

「ルイスはすごく速かったし僕もプッシュし続けなければならなかった。戦略で彼の方が1周先にピットインしていったから、そのたびにうまくやらなければならなかったしね。でも2回とも僕らはうまくやれた。最後はチームが僕をピットに呼び入れてソフトタイヤに履き替えるというすごく良いコールをしてくれたんだ。あの瞬間は『これはうまく行くのかな? わからないぞ』と思っていたんだ。でもリスタートしてすぐにルイスのトウを使ってターン1のアウトから抜くことができて、ターン1でもターン4でも良いバトルだったね。そこからはタイヤのアドバンテージもすごく助けになって、トップを快走してレースをコントロールすることができたんだ」(フェルスタッペン)

 ペースをコントロールしタイヤをいたわる余裕さえあったフェルスタッペンだけでなく、アレクサンダー・アルボンはレース終盤にフェラーリ勢を抜き去って自力で3位に浮上してきた。ガスリーは前述のとおりハミルトンを押さえ込み、最終コーナーからの長い加速競争でメルセデスAMGを押さえ切ってみせた。

 メキシコほどではないにせよ、標高800mのサンパウロでホンダのパワーは明らかに優位性があった。メルセデスAMGはテクニカルディレクターのジェームス・アリソンが「今週末の彼らは車速が速い。我々はコンプレッサーの都合でこれ以上に過給を上げることができず、苦戦を強いられることはレース週末を迎える前からわかっていた」と認めていた。

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