2019.11.12

バレンティーノ・ロッシ、40歳からの逆襲。
「畜生。まだあきらめるもんか」

  • ニール・モリソン●取材・文 text by Neil Morrison
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 ムニョスと長年仕事をしてきた人物と話した際に、彼もムニョスの指名に驚いたと述べた。彼によれば、ムニョスは物静かで落ち着いた性格で、フリープラクティス段階からトップテン目指して慌ただしさと喧騒がひっきりなしのMotoGPのピットボックスに静謐さをもたらすだろう、と言う。バニャイアもその言葉を裏づける。

「去年は彼のおかげでチャンピオンを獲れた。ラスト数戦はガチガチに緊張していたけど、ダビドが落ち着かせてくれた」のだと言う。「バレと一緒に仕事をできるこのチャンスを、彼ならきっと活かすことができるよ」

 だがその一方で、上記の人物によると、ムニョスの技術者としての能力はとくに抜きん出たものではない、とも言う。ムニョスが数々のトップライダーたちと仕事をしてきたのは事実だ。ロレンソの125ccクラス時代にはデルビでクルーチーフを務め、近年ではシト・ポンスのMoto2チームでクルーチーフとしてビニャーレスやリンスを担当した。その後、2017年にスカイレーシングへ移籍した。

 その意味ではトップレベルで仕事をしてきたといえるが、頂点を極めたわけではない。しかも今回は、その頂点にいる選手のなかでも最も栄華を極めたライダーの傍らにつくことになるのだから、要求される責任の重さはこれまでと比較しようがないだろう。

 しかし、ヤマハはムニョスにMotoGPの経験がないことを大きな問題と考えてはいないようだ。「いわば、日本人の影武者がいるんですよ」とメレガリは説明する。その方法を使えば、早く順応できるのだという。

「ダビドと一緒に働く人たちと情報を共有したうえで、最終的な決定を行ないます。MotoGPの経験がないとくに最初の段階では、その方法が役に立つでしょう。エステバン(・ガルシア/今年からビニャーレスのクルーチーフを務めている人物)でも、それは実証済みです。

 エステバンの場合は、MotoGPの経験こそありましたが、ヤマハではありませんでしたからね。この点に関して、ヤマハはとてもうまく噛み合う組織になっているのです。ムニョスもほどなく、自分のやりかたで仕事を進められるようになるでしょう」