バレンティーノ・ロッシ、40歳からの逆襲。「畜生。まだあきらめるもんか」 (3ページ目)

  • ニール・モリソン●取材・文 text by Neil Morrison
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

「スロットルを開けるタイミングやバイクの引き起こしも、要因かもしれません」と、モンスターエナジー・ヤマハのチームディレクター、マッシモ・メレガリは言う。「彼の体格だと、荷重の移動が(ビニャーレスやクアルタラロとは)異なります。そう考えるとわかりやすいのですが、それだけではないでしょうね」

 もちろんロッシ自身は、この厳しい状況を明確に自覚している。シルバーストーン(第12戦・イギリスGP)ではこの苦戦続きの状態を指して、「非常につらい」と述べている。

 この心情は、グランプリ400戦という節目に近づき、それを越した今もなお、彼のモチベーションや自らを信じる気持ちに影響を与えているようだ。8月末のシルバーストーンで彼は、「レース歴もこれくらいになると、走ること自体を楽しめるようにならなければいけない」と話した。「そう思えなきゃ、つらすぎるよ」と。数々の偉業を成し遂げてきた人物には、セパンの4位もけっして満足できるものではなかっただろう。

 何かを変えなければならなかったのだろう。6年間ともに働いてきたクルーチーフのシルバノ・ガルブセラが去るというニュースは、とくに驚くほどのものではなかった。

 だが、彼に替えてダビド・ムニョスが就くという話には、たしかに驚いた。ムニョスは現在、スカイレーシングVR46のMoto2チームでニッコロ・ブレガのスタッフとして働いている人物だ。昨年、ペコ・バニャイア(プラマック・レーシング/ドゥカティ)がMoto2でチャンピオンを獲得した際に重要な役割を果たしたのがムニョスだった、とロッシは指摘した。

 つまりロッシには、少なくとも挑戦しようという意思がある、ということだ。「後悔はしたくないんだよ」とロッシはブリラムで述べた。「僕と同じ状況にいる人なら、『オーケイ、2020年は僕の最後の年だから波風立てずにもうのんびりやろうじゃないか』、そう考えても不思議じゃない。でもね、僕はこう考えるんだ。『畜生。まだあきらめるもんか』ってね」

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