バレンティーノ・ロッシ、40歳からの逆襲。「畜生。まだあきらめるもんか」 (2ページ目)

  • ニール・モリソン●取材・文 text by Neil Morrison
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 同じヤマハ勢のビニャーレスやクアルタラロが、とくにシーズン後半戦でマルケスを猛追していたことを想起すれば、ロッシの厳しい状況はさらに明白だ。マシン的な問題で彼が後塵を拝している、という説明には無理があるのだ。

 ミザノ(第13戦・サンマリノGP)やブリラム(第15戦・タイGP)、もてぎ、フィリップアイランド(第17戦・オーストラリアGP)、そしてセパン(第18戦・マレーシアGP)の内容や結果を見れば、ヤマハが本来の力を発揮していることは明白だ。今のYZR-M1がもっともバランスのいいパッケージであることは、異論を待たない。

 ということは、現在40歳のロッシは、もはや限界を迎えているのだろうか?

 もちろん、ロッシ自身はそう考えていないに違いない。ここまで通算115勝を挙げ、9回の世界チャンピオンを獲得した人物である。もし、引き際だと彼が考えているのならば、2020年シーズン以降の契約更改をプレシーズン中に検討するという余地は残していなかっただろうし、来季のクルーチーフを替えるという決断もしていなかったはずだ。

 ちなみに、彼が最高峰クラスでクルーチーフを替えるのは、これが2回目になる。さらに、彼が本当に引退を検討しているのならば、ここまで真剣にトレーニングを継続し、40歳を超えてなおライディングスタイル改造に取り組むようなことはしていないだろう。

 今季のロッシが苦戦している原因は、レースディスタンスの最後までリアタイヤが持たないことで、それがリアのトラクション不足として現れている。ヤマハがトップスピードで不利なことも、さらにロッシを悩ませている要素だ。

 2019年のレースで、YZR-M1は常に直線で最も遅いバイク、という状況に甘んじている。ロッシの体格は181cm・69kg。クアルタラロは177cm・66kg、ビニャーレスは171cm・64kgという数字と比較すれば、ロッシはなおさら不利である。

 とはいえ、身長や体重差だけでロッシの現在の苦戦を説明しきれるわけではない。ミザノではヤマハ最上位から11秒差、アラゴン(第14戦・アラゴンGP)では17秒差、ブリラムでは18秒差である。つまり、ロッシ苦戦の原因は依然として謎、というわけだ。

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