スーパーフォーミュラ王者決定。ニック・キャシディが1年越しのリベンジ (2ページ目)

  • 吉田知弘●取材・文 text by Yoshita Tomohiro
  • 吉田成信●撮影 photo by Yoshida Shigenobu

 最終戦の舞台・鈴鹿サーキットは山本が大得意としているコース。流れは少しずつ山本のほうに傾きつつあるのか......。だが、キャシディは自身の力で不穏な雰囲気を変えていった。

 10月26日の公式予選Q3。ホンダ/M-TECエンジン勢が上位を占めるなか、キャシディはトヨタ/TRD勢で唯一Q3に残る。そして、コースぎりぎりを攻めるタイムアタックで6番グリッドを獲得。5番グリッドの山本のとなりに並ぶことができた。

「自分がこれまで鈴鹿で走ってきたなかで、本当にパーフェクトな1周を刻むことができた。山本のとなりのグリッドにつけられた。今の僕たちが持っているパッケージを考えると、ポールポジションに値する出来だ」

 キャシディの勢いは、決勝レースでも衰えることはなかった。ソフトタイヤでスタートするやいなや、次々と前方のマシンを抜いていき、8周目には2番手に浮上した。

 一方、ポールポジションからの逆転勝利で年間王者の座を狙うランキング3位のアレックス・パロウ(TCS NAKAJIMA RACING)は、タイヤ交換直後にマシントラブルが発生して順位を大きく落とす。また、ランキングトップの山本は早めにタイヤ交換を済ませる作戦を選んでキャシディを追いかけたが、思うようにペースを上げられず苦戦していた。

 安定した走りを続けるキャシディは、タイヤ交換後も2番手のポジションをキープ。そのままチェッカードフラッグを受け、初のスーパーフォーミュラ年間王者となった。外国人ドライバーがチャンピオンとなるのは、2011年のアンドレ・ロッテラー以来。キャシディは全日本F3、スーパーGT(GT500クラス)に続き、国内レース三冠目を達成した。

 1年前に悔しい思いをした鈴鹿で、キャシディはついに栄冠を勝ち取った。ゴール後はマシンのなかで号泣したという。

「正直、なんて言っていいかわからない。ゴールした後のウイニングランは、ずっとコックピットのなかで泣いていた。こんなことは今までなくて、最後に泣いたのはいつだっただろう......と思うくらい、普段は泣くことがないから。だけど、今日はずっと涙が止まらなかった」

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る