MotoGPファクトリーチームが揉めている。火種になったライダーの未来は (6ページ目)

  • ニール・モリソン●取材・文 text by Neil Morrison
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 そして、ここまでさまざまな出来事があったが、それにもかかわらずKTMはザルコに厚情を示している。ある技術者は、ザルコのKTM移籍が成功に終わらなかった寂しさを吐露してくれた。

 だが、両者の関係は、最後は苦々しい結末に終わらなかった。アラゴンにやってきたザルコは、2日前に自分へ役務を提供しないと決定した経営陣と握手を交わした。また、チームの皆とも別れの握手を交わした。すでにプレッシャーから解き放たれ、思考も明晰である証だ。あの時のザルコとは、もはや違うのだ。

 ベイラーはまた、ザルコに対して1年分の報酬を全額支払うことに加え、次戦で別のメーカーのマシンに乗る機会が生じた場合にはそれを許諾する、とも述べた。「要するに私は、あの若者が好きなんですよ」。

 それにしても残念なのは、現在のザルコが苦境に追い込まれてしまっていることだ。テストライダーとしてのオファーはあるのかもしれない。だが、この数カ月の間には、いくつもの欠点が明らかになってしまった。どこかのファクトリーチームが彼の能力を高く評価することは、難しいかもしれない。

 だが、最高峰クラスにデビューした2017年には、初戦のカタールをはじめ、ル・マンやフィリップ・アイランドでプレッシャーをものともせず、高いパフォーマンスを発揮した選手なのだ。その彼が今、このような状況にあることは、本当に残念極まりない。

西村章●翻訳 translation by Nishimura Akira

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