佐藤琢磨「最後ボロボロは自分らしい」。
今季のインディカーを総括

  • 天野雅彦●文 text by Masahiko Jack Amano
  • 松本浩明●写真 photo by Hiroaki Matsumoto

 ニューガーデンは表彰台で涙を浮かべ、次のように語った。

「こんな感情が込み上げてくるとは考えていなかった。2週間前にポートランドのレースを終えたあと、ポイント争いの厳しさ、チャンピオンになるために必要な条件などを考え、自分の置かれた状況の難しさをあらためて強く感じた。それ以来、僕には大きなプレッシャーがかかり続けていたから、シーズンが終了した今、とても安堵している。チーム・ペンスキーのドライバーがチャンピオンになるという目標に向かって奮闘し、結果的に自分がチャンピオンになることができ、とてもうれしく思う。

 安定感を保てたシーズンだったと、自分では考えている。最終ラップにパスを仕掛けてリタイアを喫したレースもあったが、常にひとつでも上位でゴールを目指すのが自分だから、そのようなミスはある。そして、起こってしまったことを後悔しても仕方がないので、ミスのことは忘れ、残るレースを全力で戦い続けた。何勝もできるドライバーでも、シリーズチャンピオンになれないことは往々にしてある。チャンピオンになるのは本当に大変だ。チャンスが巡ってきたら、もう2度と訪れないかもしれないのだから、確実に手にしなければならない。

 2度目のタイトルは、2年前の初めての時より喜びが大きい。そんな風に感じるとは考えてもいなかったし、それがなぜなのかもわからない。きっと、自分をサポートしてくれているチームの偉大さ、彼らに対する感謝の気持ちなどを、自分なりにより深く理解するようになったからだろう」

 一方、昨年に続いてランキング2番手で最終戦を迎えたロッシは、予選3位から初タイトルを狙う戦いをスタートさせた。優勝すればチャンピオンになれる可能性は十分にあったが、昨年の最終戦同様、ロッシは自らのマシンを、優勝を争えるレベルに仕上げていなかった。

 シーズンの中盤まで、ロッシは安定した速さを見せ、タイトル争いを強く意識した戦いをしていたが、徐々にハータよりパフォーマンスの低いレースが増えていった。

2 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る