歓喜の抱擁。日産勢が苦戦続きのスーパーGTで一矢を報いた! (2ページ目)

  • 吉田知弘●取材・文 text by Yoshita Tomohiro
  • 吉田成信●撮影 photo by Yoshida Shigenobu

 チーム監督には、昨年まで日産系チーム総監督を務めていた田中利和氏が就任。チームはGT300クラスで長年経験を積み、昨年からGT500にステップアップしてきたが、今年は中身を総入れ替えした"新チーム"として臨んだ。

 だが、新チームゆえに、開幕当初はうまくいかないことも多かった。平手とマコヴィッキィはGT500仕様の日産GT-Rに乗るのが初めてで、シーズンオフから走り込んできたものの、開幕戦は予選8番手・決勝4位。ふたりのドライバーは「勝負はシーズン後半戦。結果を出すことに焦らず、着実にレベルアップしていきたい」と語っていた。

 するとその言葉どおり、中盤戦になると効果が出始める。第4戦・タイでは予選3番手、続く第5戦・富士では予選2番手を獲得。とくに富士ラウンドでは、序盤から表彰台争いに絡む速さを見せた。

 ただ、その富士では他車との不運な接触で後退を余儀なくされ、第6戦・オートポリスではGT300クラス占有時間に走行を続けて罰金ペナルティが科される。速さは発揮できているのだが、それを結果につなげられないレースが続いた。

 しかし、ふたりのドライバーは決してあきらめなかった。なぜならば、彼らはこの2019シーズンに特別な思いを抱いて参戦しているからだ。

 平手はレクサスで2013年と2016年に年間王者に輝くも、2017年終了時にレクサスのGT500シートを失うことになった。2018年はGT300クラスのトヨタ・プリウスから参戦するも、心の中では「もう一度、GT500クラスで戦いたい」という思いが消えることはなかった。

 シーズンオフ、平手は各チームと交渉を重ねた。そして2019年、ついに3号車のシートを勝ち取ったのだ。長年トヨタ/レクサスで走ってきた平手だが、プライベートでは日産GT-Rが大好きだと言う。憧れだったGT-Rで1勝目を飾りたいという思いは、レースを重ねるごとに強くなっていった。

 また、マコヴィッキィもスーパーGTで結果を残すことに大きなこだわりを持っていた。2013年にスーパーGTに参戦したマコヴィッキィは、日本でこのシリーズを長く続けたいという思いが強かった。しかし、フランスに家族を残して日本でレースを続ける難しさに直面し、2014年かぎりでスーパーGTを去ることになった。

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