2019.09.13

室屋義秀が明かすエアレース最終戦の裏側。
次の行き先は「見えている」

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki

エアレースのラストレースを終え、取材に応じる室屋 photo by Asada Masaki よりによって、なぜこんな言い方をしなければならなかったのか。その真意が知りたかった。

 幸いなことに、ラストレースの2日後、室屋に話を聞く機会を得た。これまで室屋には、数えきれないほどの取材をしてきたが、"元・エアレースパイロット"の室屋にインタビューするのは、これが初めてのことだ。

「引退と違って、自分の意志でどうにかできるものではないし、前(2010年のレッドブル・エアレース休止の発表)とは違って、主催者がもうやめると言っているんだから、期待感を残しておくのも違うんじゃないかなと、僕は思っていて。だから自分のなかでも、パイロットを引退するわけじゃないし、全部が終わるわけじゃないんだから、これはこれで一回締め括ったほうがいいのかなと思ったんです」

 感じていた疑問を単刀直入にぶつけると、室屋からは「自分としても、もちろん、かなり考えて(SNSに)書きました」という言葉ともに、そんな答えが返ってきた。

 自分の手ではどうにもならないことには頓着せず、自分ができることだけに注力する――。それは、室屋がレッドブル・エアレースを戦うなかで身につけ、徹底していた思考だが、どうやらレースを離れても変わることがないようだ。

 そのメッセージを、室屋は外に向かって発信してはいるが、同時に、自分自身にも向けられている。

「Every ending is a new beginning.(すべての終わりは、新たな始まり)という言葉があるように、これを引きずるんじゃなくて、一回ピシッと気持ちよく終わらせることで、次が生まれてくる。だから、これでいいんじゃないのかな。自分のなかの整理としても、一回片づけて、これで終わりにする。ひとつのことが終わると、次に発生してくるものもあるので、そうなったら、それをまたやればいいと思っています」

 もはや他人が口を挟む余地などないほど、すでに粛々と気持ちの整理を進めている室屋に、最後に少しだけエアレースパイロットに戻ってもらい、ありきたりな質問と知りつつ、尋ねてみる。

 これまでの54戦のなかで、もっとも印象に残っているレースはどれですか、と。

「やっぱり、この間の最終戦になるのかな。自分のミスで始まって、そこから勝ち上がっていったという展開も劇的だったし、最後に力を出し切って、ベストフライトで終われたら気持ちいいだろうなと思っていたら、実際にそれができたので。ここまで満足感を持って終われることは、なかなかないと思うし、それはうれしかったです」