室屋義秀がエアレースで有終の美。総合優勝ならずも「100%満足」 (3ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by Jason Halayko/Red Bull Content Pool

 今季のホールは、全4戦で5、2、1、3位と成績が安定。そのうえで直接対決のチャンスを逃さず、独走態勢を築きつつあった室屋を下した。ホールは、決して室屋の取りこぼしに助けられたわけではなく、自力で世界王座をつかみ取ったと言っていいのだろう。

 室屋も潔く勝者を称える。

「これがチャンピオンシップ。ワールドチャンピオンシップというのは、こういうものだと思う。シーズンを通してみれば、マットのほうがずっと安定してた。バラトン湖での対戦は、風の影響もあったけど、自分のラインのミスもあった。トータルで言えば、マットのほうが今年は実力が上だったということだと思います」

 思えば今年5月、今季限りでのレッドブル・エアレース終了が突然発表され、今季のレースも9月までの全4戦に短縮されることが決まった時から、室屋は自身の世界一奪還計画を"短期決戦モード"へと切り替えた。

「(終了発表の時点で)あと3戦しかなく、(最終戦が9月と)時間的にも限られるなかで、カザン(第2戦)の少し前くらいからかな、自分自身のフィジカル的なものもそうだし、技術的なトレーニングもそうだし、機体やフライトシステムの研究とかも含めて、この3カ月くらいの間で一気に進めてきた。このペースで1年間続けるのは無理っていうくらい、やれるだけのことはやってきました」

 そんな達成感があったからなのだろう。室屋は千葉での最終戦を前に、こんなことを話していた。

「最後にもう一回、最高の準備をして、自分がどれだけの力を出せるのか。それが今は楽しみなんです」

 最終戦で優勝することはできた。だが、逆転での年間総合優勝には、あと一歩届かなかった。目標は達成されたとも言えるし、されなかったとも言える。

 最高の準備はできましたか――。あらためてそんなことを尋ねると、室屋は大きくうなずき、即答した。

「100%満足していいと思います」

 そして、室屋は「チャンピオンシップ(年間総合優勝できるかどうか)は自分の力というより、他との相対勝負だったので。1年トータルでは、そういう実力だったということでしょう」と話し、納得の笑みを浮かべた。

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