室屋義秀がエアレースで有終の美。総合優勝ならずも「100%満足」 (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by Jason Halayko/Red Bull Content Pool

 この時に"剥奪"された1ポイントがあれば、室屋はホールに並ぶことができていた。すべての結果が出た今になってあらためて振り返ると、あまりに重い"幻の1ポイント"だったことになる。

「もうホントに、返してって感じ」

 およそ2カ月前を振り返り、室屋はそんな言葉を口にした。

 もちろん、本気ではない。その証拠に、室屋はそう言い終わると、ケラケラと笑った。本来なら思い出すのも腹立たしい出来事だったに違いないが、自らの年間総合優勝を阻んだ幻の1ポイントを、今となっては笑い飛ばせるだけの充実感を覚えている、ということなのだろう。

「あそこで"勝負あった"だったんだと思います」

 室屋がそう語り、幻の1ポイント以上に重要な勝負の分かれ目だったと振り返るのは、第3戦のラウンド・オブ・14。室屋が予選9位に繰り下げられたことで、同6位のホールと対戦した時のことである。

 第3戦を前に、チャンピオンシップポイントランキングで首位に立っていた室屋は、同3位のホールを17ポイントもリードしていた。だが、室屋はホールを「マットも(調子が)上がってきているから」と強く警戒。そんな相手といきなりの対戦が決まった時には、「どうせどこかで戦わなければいけないんだから」と語り、室屋はポイント争いのライバルを初戦で叩く絶好の機会を得たとばかりに、必勝の態勢を整えていた。

 しかし、結果はホールの勝利。室屋はフライト直前に予想していた風がパタリと止んだことで、想定したラインが完全に裏目に出て失速。ホールに2秒近い大差をつけられ、完敗を喫した。

「あそこでチャンピオンシップ(の行方)は決まったということでしょう」

 室屋はそう言って、この直接対決こそが、"事実上の決勝戦"だったことを認める。

 今季全4戦中3戦で優勝しながら、年間総合優勝を逃した室屋の視点に立てば、第3戦の取りこぼしが痛かった、ということになる。

 だが、一方でホールの視点に立てば、室屋がポイントを取りこぼしたわけではなく、自ら勝負どころでライバルを直接叩き、ラウンド・オブ・14敗退(12位)に追い込んだ、ということになる。

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