佐藤琢磨がインディ年間王者を狙うには何が足りないのか? (3ページ目)

  • 天野雅彦●文 text by Masahiko Jack Amano
  • 松本浩明●写真 photo by Hiroaki Matsumoto

 シリーズでもベテランの部類に入る琢磨に対し、そのあたりの戦い方までチームがいちいち指示や確認は行なわないということもある。ライバルたちとどう戦うか、バトルはドライバーの裁量と考えることもできる。しかし、チーム側がドライバーをサポートするアドバイスを行なうことは可能だ。

 琢磨が最初に加わったインディーカーチームの共同オーナーであるジミー・バッサーは、「遅いドライバーを速く走らせるのは無理だが、速いドライバーのスピードをコントロールすることは可能だ」と言っていた。それぞれのレースで、チームとしてどういう目標の実現を目指すのか、そのためにどんな戦い方ができるのか、レースのどの時点で何が達成されているべきなのか......ドライバーとチームが同じ考え方をするために、深くコミュニケーションを取ることでよりよい成績を手に入れることは可能だ。

 琢磨もチームも、失敗があればそこから学び、全体のレベルを引き上げることを目指している。第9戦テキサスでの琢磨は、ポールポジションからトップを快走したが、ピットにオーバースピードで入り、クルーと接触するアクシデントを起こした。優勝のチャンスを逸したレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングは、二度と同じトラブルが起こらないよう、ゲイトウェイではピットの場所をより明確にドライバーに知らせる照明装置を用意していた。テキサスのミスは、琢磨が自らのピットを発見しにくかったことが原因だったため、次のナイトレースではそれへの対処がなされていたのだ。
 
 2カー体制も昨年よりレベルアップしている。経験豊富なエンジニアを招聘し、サポートエンジニアも増強してシミュレーターを活用したマシン解析がプログラムに加わった。昨年は琢磨のポートランドでの1勝だけだったが、2シーズン目の今年は琢磨がバーバーとゲイトウェイで合計2勝。グレアム・レイホールがこの2シーズンで1勝も挙げていない点は気になるが、チームとしてレベルを上げていることは間違いない。

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