佐藤琢磨が逆境はねのけ今季2勝目。実力で「犯人扱い」の声を封じた (2ページ目)

  • 天野雅彦●文 text by Masahiko Jack Amano
  • 松本浩明●写真 photo by Hiroaki Matsumoto

 残念だが、叩きやすいところが叩かれた。アメリカのレースで、チャンピオン争いをしているアメリカ人ドライバーがクラッシュ。アメリカに挑戦しているドライバー、琢磨が犯人扱いをされた。「ロッシをクリアしたと思った」という彼のコメントの一部分は、"ミスジャッジしてラインを下げた"と曲解された。

 週が明けてから、レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングの代表が、インディカー本部にチームのテレメトリー・データとオンボード映像を提出し、琢磨が左=ロッシの側にステアリングを切ったのは接触が発生した後だったという説明を行なった。

 結局、心配されていた琢磨へのペナルティが課されることはなかった。琢磨は潔白。接触は不幸にも起こってしまったレーシングアクシデントという裁定が下された。

 だが、ポコノの翌週に開催されるシリーズ第15戦ゲイトウェイでは、琢磨に大きなプレッシャーがのしかかった。もしこのレースでアクシデントを起こせば、批判の真っ只中に逆戻りをさせられるからだ。

 そんな状況でも、琢磨は予選5位に食い込んだ。「チームが自分をサポートしてくれている。それは本当に嬉しいし、レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングというチームを誇りに思う。今回の一件でチームの一体感は強くなった」と琢磨は話していた。

 レース前のドライバー紹介でも、琢磨には多くの激励の声が飛んでいた。ファイティングスピリットを強く感じる走りを見せるドライバーとして、琢磨はアメリカで多くのファンを獲得しているのだ。彼らは「批判に負けるな!」「アグレッシブに戦え」と声援を送っていた。

 今回はナイトレース。照明を浴びながらのスタートに、琢磨は慎重に臨んだ。そこをジェームズ・ヒンチクリフ(アロウ・シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)が突き、インに飛び込んできた。琢磨の右にはポコノで絡んだハンター-レイがいた。ヒンチクリフがバランスを崩して琢磨に接触し、琢磨はハンター-レイにヒット。先頭グループの混乱は2レース連続の多重クラッシュになりかけたが、2人がどうにかマシンをコントロールしたことで最悪の事態は避けられた。

2 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る