F1後半戦展望。スペック4投入でレッドブル・ホンダが主役に躍り出る (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

(壊さず性能も最大限に引き出す)いい攻めどころを見つけたのがオーストリアGPだったし、ホンダの全員が一段も二段も成長した。僕も全日本カートをやっていたからわかるんですけど、エンジンって壊れる直前が一番速いんです。でも、その速さを使いつつも壊さない乗り方があるんですけど、この一連のレースでその勘所をエンジニアたちが学んだんでしょうね」

 そして、シーズン後半戦の行方を握るのが、ホンダのスペック4パワーユニットであることは間違いない。

 もしホンダが、フェラーリとまではいかずとも、メルセデスAMGと同等レベルのパワーを出せるようになれば、レッドブルはもっと上位で戦えるようになる。つまり、常に優勝争いに絡んでいくことができるということだ。

 そのためにはICE(内燃機関エンジン)の基本出力の向上だけでなく、点火時期調整によるアグレッシブな予選スペシャルモードの使用が必要不可欠だ。その激しい負荷に耐えうるだけの耐久性をICEに持たせることと、予選アタック時の負荷によるICEへのダメージ量を正確に把握し、コントロールすることが求められる。

 フランスGP以降のスペック3で多くを学んだことで、それが実現できるかどうか。ホンダにとっては最後の1ステップを登り切るために、何よりも大切で大きなハードルになる。

 レッドブルは例年、オーバーテイクとポジション挽回の容易さを考慮して、グリッド降格ペナルティの消化を第14戦・イタリアGPと第16戦・ロシアGPに持ってくる傾向がある。次の第13戦・ベルギーGPはマックス・フェルスタッペンの地元オランダから近く、大応援団が訪れる準地元レースという事情もある。第15戦・シンガポールGPは好成績が期待できるうえにコース上での追い抜きが難しく、ロシアGPまで現在のスペック3のマイレージを保たせることは難しいため、スペック4はイタリアGPまでに投入される公算が高い。

 その出来次第では、シーズン後半戦のレッドブル・ホンダとフェルスタッペンは選手権の主役に躍り出る可能性も十分にある。それだけの期待を抱かせてくれる、フランスGP以降のシーズン前半戦だった。

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