F1後半戦展望。スペック4投入でレッドブル・ホンダが主役に躍り出る (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

「それがデータで残っていて、どうして1周目にそんなことが起きてしまうのかということを分析究明し、翌週のオーストリアGPに臨む時、オーバーヒート対策のためにキャリブレーション(調整)をやり直した。こういう時に4台走っているのは有利なもので、4台分のデータをHRD Sakuraで検証して、オーストリアのような暑いコンディションでもセーフモードに入らず耐えうるギリギリのセッティングをしてくれた。それが、あの勝利につながったんです」

 レース現場での運用を統括する田辺豊治テクニカルディレクターは「レースを止めないこと」を第一に考え、開発責任者の浅木泰昭執行役員はアグレッシブな攻めの人物、田辺テクニカルディレクターはある意味、守りの立場にいるエンジニアだ。そのバランスが、トラブルと無縁のパワーユニット運用を可能にしてきた。

 そして、フランスGPでのデータ分析から、より精度の高いパワーユニットの使い方ができるようになった。あの暑いレッドブル・リンクで攻めた使い方をして勝利をモノにした。それは、これまで以上にパワーユニットを攻めて使えるようになったからだ。

「ホンダはシーズン前半戦、スペック1から3まで投入してきましたが、まずスペック1はシーズン開幕のタイミングに合わせて信頼性とパフォーマンスの(両立できる着地点の)見極めをしたものです。そこからスタートして、その後も順調にスペック2、3と開発を続けてくることができた。パフォーマンスも含めて、明らかにステップアップしてきたと言えます」(田辺テクニカルディレクター)

 山本マネージングディレクターは自身のレース経験も踏まえて、ホンダのエンジニアたちがその勘所を掴んだことがオーストリアGP以降の快進撃の一因だと説明する。

「『自分たちのパワーユニットはここまで性能を引き出せるんだ』とわかったことが、シーズン前半戦の分岐点になったと思います。レースというのは、壊してしまうと結果が出ない。チェッカーフラッグを受けてナンボの世界ですから、そういう意味では田辺も(信頼性を第一に戦う)プロセスをよくわかっているし、壊さないオペレーションをちゃんとやるんです。

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