王者マルケスと真っ向勝負!
0.013秒差でねじ伏せたリンスが2勝目

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

「他のサーキットだと直線やハードブレーキングで不利になるところもあるけど、このコースではとくにないね」と話し、「バイクがよく仕上がっていて、機敏な持ち味を活かしてリズムよく走れている。すべてがうまく噛み合えば、表彰台争いは十分にできると思う」と、自信ありげな表情を見せた。

 とはいえ、優勝争いをできるとまでは、本人も事前には予想をしていなかったようだ。

 決勝日のレース後に「正直なところ、レースで勝てるプランを立てていたわけではなかった。マルクとファビオが自分たちよりも勝つ可能性がありそうだったから」と述べた言葉が、それを如実にあらわしている。

 だが、この日のリンスは強かった。レース序盤を過ぎてマルケスと一対一の対決に持ち込み、マルケスがリンスを前に出して様子を見ようとした時でも、リンスもそれに反応してマルケスを再び前に出すという、したたかで巧妙な駆け引きを見せた。

「コースの後半セクションはマルクがとても速く、自分の弱点を見せたくなかったので、ずっと後ろにつけていたんだ」と、レース後にその作戦を明かし、「でも、最終コーナーは自分のほうが速かった。狙いどおりに最終ラップの最終コーナーで勝負を仕掛けて勝つことができたので、すごくうれしい」と、満足そうにレース展開を振り返った。

 チームマネージャーのダビデ・ブリビオは、狙い澄ましたリンスの絶妙な仕掛けを絶賛した。

「マルケスの後ろにピタリとついて、オーバーテイクが可能な時でも焦らずに、勝負どころをしっかりと見極めて、最終コーナーで一気に仕掛けた。おそらく向こうも、この攻撃は予想していなかったのではないでしょうか。今日のアレックスはクレバーで、すべてをうまくマネージする完璧なレース内容でした」

 第3戦・アメリカズGPは、バレンティーノ・ロッシ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)との直接対決を制した優勝だったが、このサーキットで毎年圧倒的な強さを見せていたマルケスが自滅した結果でもあった。だが、今回のリンスは、その王者マルケスを真っ向勝負でねじ伏せた。ブリビオはその点も高く評価する。

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