佐藤琢磨はスケープゴートか。インディ多重クラッシュで「犯人扱い」 (3ページ目)

  • 天野雅彦●文 text by Masahiko Jack Amano
  • 松本浩明●写真 photo by Hiroaki Matsumoto

 潔白を証明すべく、琢磨は自らのマシンに搭載してあったオンボードカメラの映像も提供、自分がステアリングを切らずにアウト側にポジションし続けていたことをアピールした。その映像では、琢磨のマシンはコースの継ぎ目のシーム剤の線、アウト側の壁と平行に走り続けている。

 インディカーは11のアングルから事故を検証したというが、納得がいかない琢磨は、再審査と、避けられたアクシデントを起こしたドライバーという汚名の返上を要求した。また、レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングは走行データをチェックし、「接触が起こるまで琢磨が左にステアリングを切っていないとテレメトリーデータは示している」とのリリースを出し、事故の発端が琢磨のドライビングではなかったと訴えている。

 シーズンも終盤戦になると、主催者からは「タイトルコンテンダーとのバトルはいつも以上に慎重に」というアドバイスが全ドライバーに対して出される。しかし、それはタイトルコンテンダーに常に優先権を与えるという意味ではない。今回、ターン1の立ち上がりで両側からごぼう抜きにされる事態を招いたのは、誰の目にも明らかなロッシのミスだった。

 アンドレッティ・オートスポートは、レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングの主張に対する反論を出していない。彼らもデータを検証しているはずだが、不都合なものしか見つからなかったのかもしれない。泥仕合を避ける意向もあるだろう。その辺りの真相はわからない。世間のムードは琢磨批判に向かったままなので、静観をしているのかもしれない。結果的に、琢磨はスケープゴートになってしまっている。

 シリーズチャンピオンになること4回、インディ500でも3勝しているダリオ・フランキッティが、「アンドレッティ・オートスポートの2台がラインを上げていった(琢磨の側に寄っていった)」と言ってくれたと、琢磨はレース後に話した。

 だが、「琢磨がラインを下げたから接触は起きた」と断定的に書いているメディアは多く、フランキッティの声としては、「2台が一方へ、もう1台が反対側へ動いて接触は起こったように見えた。マシン同士は数ミリしか離れていないから、あのようなアクシデントは起こる。そして、ドライバーたちの見解がそれぞれ異なるのも理解できる」というコメントを掲載しているところもあった。

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