佐藤琢磨はスケープゴートか。インディ多重クラッシュで「犯人扱い」 (2ページ目)

  • 天野雅彦●文 text by Masahiko Jack Amano
  • 松本浩明●写真 photo by Hiroaki Matsumoto

 一方、マシンの破片がヘルメットを直撃したウィルソンの死亡事故は、非常に確率の小さい不運によるもので、ポコノ以外のコースでも、オーバルでなくても起こり得る。

 今回、2年連続の多重アクシデントとあって反響は大きかった。テレビのライブ放送ではロッシのオンボード映像が流されており、ロッシは琢磨側にステアリングを切っていなかった。その映像では、琢磨のマシンがロッシを抜き切る前に左に動いたようにも見えた。搭載されているのが広角レンズであるため、両サイドのマシンは画面の中央に向かって進んでいくように映るのだ。

 解説者で元チャンピオンのポール・トレイシーは「佐藤がロッシ側に降りた」と即座に断言。さらに、タイトル争い真っ只中のランキング2番手のロッシが、「去年あのようなアクシデントがあったのに、琢磨がどうして今回あのようなドライビングをしたのか理解できないし、受け入れられない。500マイルレースの1周目に、あのスピードで2台に向かってラインを降ろしてくるなんて恥ずべき行為で、頭にくる。このせいでタイトルを逃すことになるかもしれない」とまでコメントしたため、琢磨に対する批判の声は高まった。

 トレイシーは、「佐藤は1レース出場停止ぐらいのペナルティを受けてもいい」とまで言い、主催者のインディカーは「避けられる接触を起こした者」との判定を琢磨に対して下した。

 これに対して琢磨は抗議し、「私はロッシ側に降りていない。ロッシとハンター-レイが上がってきた」との主張を証拠映像とともにツイッターに上げた。すると、ファンからは非難の声が寄せられ、ロッシも「ディクソンのドラフティング()を独り占めしようと降りてきたのはそっちだろ!」との反論をツイート。ちょっとした炎上状態になった。
※他のマシンの直後を走行することで空気抵抗が小さくなり、スピードが増す状態

 ロッシのツィートが感情的なのは、タイトルを争う身でポイントを稼げなかったから仕方がない面もある。アメリカ期待の若手チャンピオン候補が相手であるから、琢磨の分が悪いのも確かだ。しかし、だからと言って、琢磨が罪をすべて被らせられる道理はない。

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