もっとコース上での追い抜きを! F1新レギュレーションを巡る駆け引き (2ページ目)

  • サム・コリンズ●取材・文 text by Sam Collins
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 一方で、その後のオーストリアGP(レッドブル・リング)、イギリスGP(シルバーストン)、ドイツGP(ホッケンハイム)の3戦は非常にスリリングで、レース中は随所でオーバーテイクやバトルが繰り広げられた。とくにシルバーストンとホッケンハイムの2戦はここ10年でも屈指の名レースと言ってもいいだろう。

 これは新レギュレーションの効果なのだろうか。その正しい評価を行なうには、もう少し時間が必要だろう。こうした変化の背景には、サーキットのコース特性や各チームのマシンの戦闘力の差、そして、個々のレースの展開も大きく影響するからだ。また、シーズン中盤に向けて、新レギュレーションに合わせた各マシンの空力性能の改良が進んでいることも、レース内容の変化をもたらしている可能性がある。

 だが、少なくともいくつかのサーキットでは、従来よりも多くの追い抜きやコース上でのバトルが可能になっているのは事実。今後、それらが新たな空力規定の効果であると確認できれば、それが将来のF1レギュレーションにも影響を与えることになるだろう。FIA(国際自動車連盟)とF1は、現在、2021年シーズンに向けてテクニカルレギュレーションを刷新するための議論を続けている最中だ。

 この新ルールの目玉は、マシンの底面と路面の間に発生する負圧をダウンフォース(マシンを路面に押し付ける下向きの力)として積極的に活用する「グランドエフェクトカー」の復活や、空力パーツなどの構成全体をかなり単純化して、オーバーテイクをよりしやすくすることだ。

 前後ウィングは非常にシンプルな形状になり、むき出しのホイールが引き起こす乱流の低減や、大事故の原因となる車輪同士の接触を防ぐためのホイールカバー(ハブキャップ)を採用。ホイールは大径化される方向のようだ。マシンのノーズを低くしてより魅力的なボディワークと空力パーツを減らすことにより、スッキリとした外観を目指すという。

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